企業版ふるさと納税を福利厚生に活用する仕組みと具体事例集
「企業版ふるさと納税を導入して、節税しながら福利厚生を充実させたい」と考えている担当者の方は多いのではないでしょうか。個人のふるさと納税とは異なり、企業版には「返礼品」がありません。しかし、自治体のプロジェクトを支援することで、実質負担1割で従業員の満足度を高める仕組みを構築できます。
この記事では、企業版ふるさと納税を福利厚生として活用する具体的なスキームや、実際に導入している企業の事例、注意すべきルールを専門的な視点で解説します。
福利厚生としての企業版ふるさと納税の仕組み
企業版ふるさと納税とは、国が認定した自治体の地方創生プロジェクトに対して企業が寄附を行った際、税制上の優遇措置を受けられる制度です。
寄附からサービス提供までのフロー図解
企業版ふるさと納税を福利厚生に活用する場合、一般的な寄附とは異なる流れになります。
- 自治体の選定とプロジェクトの決定 従業員が利用できる施設(宿泊施設やコワーキングスペースなど)の整備や、地域イベントに関連するプロジェクトを探します。
- 寄附の実施 企業が自治体へ寄附を行います。この際、特定の「見返り」を求めることは禁止されていますが、プロジェクトの成果物を広く一般や企業が利用することは可能です。
- 福利厚生制度としての整備 自治体が整備した施設や実施するプログラムを、企業の福利厚生メニューとして従業員に提供します。
最大約9割の税額控除による節税メリット
企業版ふるさと納税の最大の魅力は、非常に高い節税効果にあります。
- 法人事業税・住民税・法人税からの控除 通常の寄附金としての損金算入(約3割)に加え、さらに法人住民税などから最大6割が税額控除されます。
- 実質負担額 合計で寄附額の最大約9割が軽減されるため、企業は実質**10%**の負担で自治体を支援できます。
(参考:内閣府 地方創生推進事務局 企業版ふるさと納税ポータルサイト https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikireisei/kigyou_furusato.html)
利益供与の禁止事項と適法な運用の定義
企業版ふるさと納税では、寄附の代償として自治体から経済的な利益を受ける利益供与が厳格に禁止されています。
- 禁止されている行為 寄附をした見返りとして、その企業専用の宿泊券や特産品を「返礼品」として受け取ることはできません。
- 適法な運用の考え方 自治体が整備した公共施設を、他の利用者と同じ条件(または合理的な範囲内での優先利用など)で従業員が利用する形であれば、福利厚生として成立します。あくまで「地域活性化のためのプロジェクト」を支援した結果として、その恩恵を享受する形をとる必要があります。
企業が福利厚生に活用する3大メリット
企業版ふるさと納税を福利厚生に組み込むことは、コスト面だけでなく、企業のブランド価値向上にも直結します。
実質負担1割で実現する充実した福利厚生
自社でゼロから福利厚生施設を建設・維持するには膨大なコストがかかります。しかし、企業版ふるさと納税を活用すれば、100万円の寄附でも実質負担は10万円程度に抑えつつ、自治体が管理する質の高い施設やサービスを従業員に提供できる可能性があります。
地方創生への貢献による社会的信用の向上
SDGsやESG経営が重視される昨今、地方創生への貢献は企業の社会的責任(CSR)を果たす重要な活動です。特定の地域を継続的に支援する姿勢は、取引先や株主からの社会的信用を高めることにつながります。
地域資源を活用した独自の採用ブランディング
「地方でのワーケーション制度」や「地域交流型研修」など、他社にはないユニークな福利厚生は、採用市場での強力な武器になります。**「地域と共に成長する企業」**というイメージは、特に社会貢献意欲の高い若手層へのアピールに効果的です。
従業員に提供可能な具体的なベネフィット
返礼品がない企業版ふるさと納税において、従業員はどのような恩恵を受けられるのでしょうか?
寄附先の宿泊施設や公共施設の利用権
自治体が寄附金を用いて整備した宿泊施設、キャンプ場、スポーツ施設などを、従業員が優待価格や優先枠で利用できる仕組みです。
- 宿泊施設の利用 自治体が運営するゲストハウスや保養所を福利厚生施設として活用。
- 公共施設の活用 寄附によってリニューアルされたスポーツジムや図書館などの利用。
地域特産品を活用した社内イベントの開催
直接的な返礼品としての受け取りは不可ですが、自治体が主催する「地域PRイベント」や「収穫体験」に従業員が参加する形は可能です。
- 社内食堂での活用 支援先の自治体の食材を社内食堂で提供し、地域の魅力を周知する。
- 交流イベント 自治体と連携したマルシェや物産展を社内で開催し、従業員が地域文化に触れる機会を作る。
ワーケーションや地域体験型研修の実施
近年、最も注目されているのがワーケーションとしての活用です。
- サテライトオフィスの利用 寄附によって整備されたコワーキングスペースを、従業員のテレワーク拠点として活用。
- 地域課題解決型研修 自治体のプロジェクトに社員がボランティアやアドバイザーとして参加し、ビジネススキルを磨く研修プログラム。
企業版ふるさと納税の福利厚生活用事例集
実際に企業版ふるさと納税を活用して、福利厚生や地域貢献を実現している事例を紹介します。
宿泊施設利用による従業員満足度の向上
株式会社アイモバイルの事例
ふるさと納税事業を展開する同社は、長野県白馬村などの自治体へ寄附を行い、地域の観光振興を支援しています。
- 取り組み内容 寄附を通じて地域の観光インフラ整備を支援。
- 福利厚生への還元 従業員が支援先の地域を訪れる際の宿泊補助や、現地でのアクティビティ体験を推奨し、地域理解とリフレッシュを両立させています。
(参考:株式会社アイモバイル 公式サイト https://www.i-mobile.co.jp/)
地方創生プロジェクトへの体験型参加
信金中央金庫の事例
「SCBふるさと応援プロジェクト」を通じて、全国の自治体へ多額の寄附を行っています。
- 取り組み内容 地域の信用金庫と連携し、自治体の課題解決プロジェクトを公募・選定して寄附。
- 福利厚生・教育への還元 職員がプロジェクトの進捗確認や地域行事に参加することで、地域金融のプロとしての意識醸成や、現場での学びの機会を提供しています。
(参考:信金中央金庫 SCBふるさと応援プロジェクト https://www.shinkin-central-bank.jp/sustainability/society/furusato/)
スポーツ振興を通じた地域交流と福利厚生
多くの企業が取り組むスポーツ施設支援
特定のプロスポーツチームのキャンプ地や、市民球場の整備に寄附する事例が増えています。
- 取り組み内容 自治体が推進する「スポーツによるまちづくり」に寄附。
- 福利厚生への還元 整備された施設での社内スポーツ大会の開催や、地域住民との交流試合を通じたチームビルディングに活用されています。
導入ステップと自治体選びの重要ポイント
制度をスムーズに導入するためには、事前の調査と手続きの理解が欠かせません。
自治体が策定する地域再生計画の確認
企業版ふるさと納税の対象となるのは、国から認定を受けた地域再生計画に記載された事業のみです。
- 計画の閲覧 各自治体のホームページや内閣府のポータルサイトで、どのような事業が認定されているかを確認します。
- 内容の合致 自社の福利厚生の方向性(例:アウトドア、IT教育、子育て支援など)と合致するプロジェクトを選定することが重要です。
寄附の申し出から受領書受け取りの手順
- 寄附の申し出 自治体へ「寄附申出書」を提出します。
- 寄附金の払い込み 自治体から指定された方法で寄附金を納付します。
- 受領証の受け取り 入金確認後、自治体から「寄附金の受領証」が発行されます。これが税務申告に必要です。
税務申告時の必要書類と法人税処理
決算時の確定申告において、受領証を添付して税額控除の申告を行います。
- 損金算入 寄附額の全額を損金として処理します。
- 税額控除の計算 法人住民税、法人税、法人事業税のそれぞれの計算において、規定の控除額を差し引きます。
運用時の注意点と遵守すべきルール
制度の悪用とみなされないよう、以下の3つのルールは必ず守る必要があります。
本社所在地の自治体に対する寄附の禁止
企業の本社(地方税法上の主たる事務所または事業所)が所在する自治体への寄附は、税額控除の対象外となります。
- 注意点 東京に本社がある企業が東京都や、本社がある区へ寄附しても、通常の寄附金控除しか受けられません。必ず「本社所在地以外」の自治体を選びましょう。
1回10万円以上の寄附金額の要件
企業版ふるさと納税として認められるには、1回あたりの寄附額が10万円以上である必要があります。
- 少額寄附の扱い 10万円未満の寄附は、通常の寄附金としての損金算入は可能ですが、最大6割の税額控除は受けられません。
寄附の代償として経済的利益を受ける禁止
前述の通り、寄附の見返りとして物品やサービスを独占的に受け取ることはできません。
- 「経済的利益」の判断基準は? 「寄附をした企業だけが無料で使える」「寄附額に応じた金券をもらう」といった行為はNGです。あくまで「地域の活性化」が主目的であり、福利厚生としての利用は「副次的な効果」または「一般公開されているサービスの利用」という形を保つ必要があります。
まとめ
企業版ふるさと納税を福利厚生に活用することは、企業にとって実質負担1割という低コストで、従業員の満足度向上と社会貢献を同時に実現できる画期的な手法です。
成功の鍵は、自社の理念や従業員のニーズに合った自治体のプロジェクトを慎重に選定することにあります。返礼品という直接的なメリットがないからこそ、地域との深い繋がりを築き、それを独自の福利厚生として昇華させる視点が求められます。
まずは、自社が応援したい地域や、従業員が喜ぶアクティビティがある自治体の「地域再生計画」をチェックすることから始めてみてはいかがでしょうか?
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自然豊かな南阿蘇村での活動を福利厚生の一環として取り入れてみてはいかがでしょうか。
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