企業版ふるさと納税とは?法人のメリット・仕組みを国税庁より解説

「会社の節税対策を探している」「CSR活動として地域に貢献したい」 このようにお考えの経営者や経理担当者の皆様にとって、「企業版ふるさと納税」は非常に魅力的な選択肢です。

しかし、「名前は聞いたことがあるけれど、個人版と何が違うの?」「本当に節税効果があるのか、仕組みがよく分からない」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、企業版ふるさと納税の専門家として、国税庁の情報を基に制度の仕組みから税制メリット、具体的な手続きまで、どこよりも分かりやすく解説します。

この記事を読めば、企業版ふるさと納税のすべてが分かり、自社で活用すべきかどうかを的確に判断できるようになります。

企業版ふるさと納税とは?制度の概要

まずは、企業版ふるさと納税がどのような制度なのか、基本的な仕組みから見ていきましょう。個人版との違いを理解することが、最初のステップです。

国の地方創生を応援する寄付制度

企業版ふるさと納税とは、正式名称を「地方創生応援税制」といい、企業が地方公共団体の認定した地方創生プロジェクトへ寄付を行った場合に、法人関係税から税額控除の優遇措置を受けられる制度です。

国が推進する地方創生の取り組みを、企業の力で後押しすることを目的としています。単なる寄付ではなく、企業が地域活性化のパートナーとして参画できる点が大きな特徴です。

この制度は内閣府が管轄しており、公式サイトで最新情報や対象事業を確認できます。 (参考:企業版ふるさと納税ポータルサイト|内閣府地方創生推進事務局

個人版ふるさと納税との3つの違い

多くの人が知っている個人版のふるさと納税と、企業版には明確な違いがあります。特に重要な3つのポイントを押さえておきましょう。

  • 目的 個人版が自治体への応援を目的とする一方、企業版は国が認定した「地方創生事業」への貢献が目的です。そのため、寄付の対象は特定のプロジェクトに限られます。
  • 返礼品の有無 個人版の魅力である返礼品ですが、**企業版ふるさと納税では、寄付の見返りとして経済的な利益(返礼品など)を受け取ることは法律で禁止されています。**これは、事業の趣旨が純粋な地域貢献であるためです。
  • 税の優遇措置 個人版では所得税の還付や住民税の控除が受けられますが、企業版では後述する**「損金算入」と「税額控除」という2つの仕組みで税負担が軽減**されます。

対象となる法人の要件

企業版ふるさと納税を活用できるのは、青色申告書を提出している法人です。個人事業主は対象外となります。

また、重要な注意点として、自社の本社が所在する地方公共団体への寄付は、この制度の対象外となります。これは、制度の目的が「地方への新たな資金の流れを生み出すこと」であるためです。例えば、東京都に本社がある企業は、東京都のプロジェクトには寄付できません。

最大9割の税軽減!節税メリットの仕組み

企業版ふるさと納税の最大のメリットは、寄付額の最大約9割に相当する高い税負担軽減効果です。この節税効果は、「損金算入」と「税額控除」という2段階の仕組みによって実現します。

損金算入による法人税等の軽減

まず、寄付した金額は、法人税法上「寄附金」として全額を損金に算入できます。

損金算入とは、会計上の費用として計上することで、課税対象となる所得を減らすことができる仕組みです。これにより、寄付額に対して法人実効税率(約30%と仮定)を掛けた金額分の法人税等が軽減されます。

  • 軽減効果(1段階目):寄付額 × 法人実効税率(約3割)

税額控除による法人税額の直接軽減

損金算入による軽減に加えて、さらに税額控除が適用されます。税額控除とは、算出された法人税額そのものから、一定額を直接差し引くことができる強力な仕組みです。

企業版ふるさと納税では、寄付額の最大6割が法人住民税および法人事業税、法人税から控除されます。

  • 軽減効果(2段階目):寄付額 × 最大6割

この2つの措置を合わせることで、「損金算入(約3割)+ 税額控除(最大6割)= 最大約9割」という非常に高い税軽減効果が生まれるのです。

寄付額別節税効果シミュレーション

具体的に、1,000万円を寄付した場合の節税効果を見てみましょう。(法人実効税率を30%と仮定)

  1. 寄付額 1,000万円
  2. 損金算入による軽減額 1,000万円 × 30% = 300万円
  3. 税額控除による軽減額 1,000万円 × 60% = 600万円
  4. 税軽減額の合計 300万円 + 600万円 = 900万円

結果として、1,000万円の寄付に対して900万円の税負担が軽減され、企業の実質的な負担額はわずか100万円となります。つまり、実質1割の負担で、地域貢献と企業PRが実現できるのです。

節税以外のメリットと注意すべきデメリット

高い節税効果は魅力的ですが、企業版ふるさと納税にはそれ以外のメリットもあります。同時に、知っておくべきデメリットや注意点も確認しましょう。

メリット1.CSR活動と企業PR効果

企業版ふるさと納税は、社会貢献活動(CSR)として企業のブランドイメージを大きく向上させます。

寄付先の自治体のウェブサイトや広報物で企業名が紹介されることも多く、地域社会に貢献する企業としての姿勢を内外にアピールできます。また、地方創生プロジェクトの多くはSDGs(持続可能な開発目標)にも関連しており、SDGsへの取り組みをアピールする絶好の機会にもなります。

メリット2.地域との新たな関係構築

寄付をきっかけに、これまで接点のなかった地方公共団体や地域企業との新たな関係を築ける点も大きなメリットです。

プロジェクトへの参画を通じて、地域の課題やニーズを深く理解することは、新たな事業展開のヒントや、将来的なビジネスパートナーシップにつながる可能性があります。また、地域での認知度向上は、人材採用の面でも有利に働くことがあります。

デメリット1.返礼品は受け取れない

繰り返しになりますが、企業版ふるさと納税では、個人版のような返礼品を受け取ることはできません。

あくまでも企業の社会貢献活動の一環であり、直接的な経済的見返りを求める制度ではないことを理解しておく必要があります。

デメリット2.寄付額の下限と対象事業の制限

企業版ふるさと納税には、いくつかの制約があります。

  • 寄付額の下限 1回あたりの寄付額は10万円以上と定められています。少額からの寄付は制度の対象となりません。
  • 対象事業の制限 寄付できるのは、内閣府が「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」として認定したプロジェクトのみです。自社が応援したい分野であっても、認定されていなければ寄付はできません。

寄付から税申告までの手続きと流れ

実際に企業版ふるさと納税を行う際の、具体的な手続きの流れを3つのステップで解説します。

Step1.寄付先事業の選定

まずは、どの地方創生プロジェクトに寄付するかを決めます。

**内閣府の「企業版ふるさと納税ポータルサイト」では、全国の認定事業を検索できます。**自社の事業内容や企業理念と親和性の高いプロジェクトや、応援したい地域の事業を探してみましょう。

(参考:企業版ふるさと納税ポータルサイト|内閣府地方創生推進事務局

Step2.寄付の申出と送金

寄付したい事業が決まったら、その事業を実施している地方公共団体の担当窓口に連絡を取ります。

自治体のウェブサイトなどで手続き方法を確認し、「寄附申出書」を提出します。その後、自治体からの案内に従って寄付金を送金すると、後日「領収書」が発行されます。この領収書は税務申告の際に必須となるため、大切に保管してください。

Step3.税務申告の手続き(いつまで)

税の優遇措置を受けるためには、税務申告が必要です。

寄付を行った事業年度の確定申告の際に、法人税の申告書に関連書類を添付して提出します。申告期限は、原則として事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内です。これが手続きの最終期限となります。

申告書には、自治体から受け取った「領収書」の写しと、税額控除の適用を受けるための明細書を添付します。

寄付額の上限と会計処理の実務

ここでは、経理担当者向けに、税優遇の上限額や会計処理、申告書の記載方法といった実務的な内容を解説します。

税優遇を受けられる寄付額の上限計算

税額控除には上限額が設定されており、以下のいずれか低い方の金額が適用されます。

  • 法人住民税法人税割額の20%
  • 法人税額の5%
  • 寄付額の60%

これらの計算は複雑なため、正確な上限額を知りたい場合は、顧問税理士に相談するか、国税庁や自治体が提供するシミュレーションツールを活用することをおすすめします。

会計処理で使う勘定科目

企業版ふるさと納税で寄付を行った場合、その支出は**「寄附金」として費用計上するのが一般的**です。会計処理の仕訳は以下のようになります。

(例)1,000万円を寄付した場合

借方 貸方
寄附金 10,000,000円 現金預金 10,000,000円

税額控除額については、法人税等の申告・納付時に、納付すべき税額から直接差し引く形で会計処理を行います。

法人税申告書・別表の記載方法

税額控除の適用を受けるには、法人税の申告書に以下の書類を添付する必要があります。

  • 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)に係る寄附金の税額控除に関する明細書(別表六(三十二))

この別表に、寄付先の情報や寄付額、控除を受ける金額などを記載します。記載方法の詳細は、国税庁のウェブサイトで手引きや記載例が公開されていますので、そちらを参考にしてください。

(参考:国税庁 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)に係る寄附金税額控除に関する明細書の記載の手引

企業版ふるさと納税のよくある質問

最後に、企業版ふるさと納税に関してよく寄せられる質問にお答えします。

本社が所在する自治体には寄付できる?

いいえ、できません。 前述の通り、企業版ふるさと納税は、本社が所在する地方公共団体(都道府県および市区町村)への寄付は対象外です。地方へ新たな資金の流れを作るという制度の趣旨によるものです。

令和6年度税制改正の影響は?

令和6年度の税制改正により、企業版ふるさと納税の税額控除の特例措置が令和11年度(2029年度)まで5年間延長されました。

これにより、企業は今後も安心してこの制度を活用できます。また、対象となる事業の範囲も拡充されるなど、より使いやすい制度へと進化しています。

企業の具体的な活用事例は?

内閣府のポータルサイトでは、実際に制度を活用した企業の事例が数多く紹介されています。

  • IT企業が地方のDX推進事業に寄付 自社の技術やノウハウを提供し、地域課題の解決に貢献。新たなビジネス連携にも発展。
  • 建設会社が地域のインフラ整備事業に寄付 企業の専門性を活かせる分野で社会貢献を実現し、地域での信頼を獲得。
  • メーカーが子育て支援プロジェクトに寄付 企業のブランドイメージ向上と、従業員のエンゲージメント向上に貢献。

これらの事例を参考にすることで、自社での活用イメージをより具体的に描くことができるでしょう。 (参考:企業版ふるさと納税ポータルサイト 活用事例

まとめ

この記事では、企業版ふるさと納税の仕組みからメリット、手続きまでを網羅的に解説しました。最後に、重要なポイントを振り返ります。

  • 企業版ふるさと納税は、地方創生事業への寄付で最大約9割の税軽減が受けられる制度
  • 「損金算入」と「税額控除」の組み合わせで、実質1割の負担で寄付が可能
  • 節税だけでなく、CSR活動や企業PR、地域との関係構築にも繋がる
  • 個人版と違い、返礼品はなく、10万円以上の寄付からが対象
  • 手続きは「事業選定 → 寄付申出・送金 → 税務申告」の3ステップ

企業版ふるさと納税は、単なる節税対策にとどまらず、企業の社会貢献と成長戦略を両立させることができる、非常に価値のある制度です。

まずは内閣府のポータルサイトを訪れ、自社の理念や事業に合ったプロジェクトを探すことから始めてみてはいかがでしょうか。弊社もアドバイスとプロジェクトの立ち上げを支援しています。未来への投資として、ぜひ前向きに検討してみてください。