企業版ふるさと納税の別表の書き方【記載例で解説】

「会社で初めて企業版ふるさと納税を行ったけれど、確定申告のやり方が分からない…」 「どの別表に、どうやって金額を書けばいいの?」

決算期を迎え、法人税の申告準備を進める経理担当者の方で、このようなお悩みをお持ちではないでしょうか。

企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)は、税制上の優遇措置が大きく魅力的な制度ですが、その申告手続きは少し複雑です。特に、法人税申告書に添付する**「別表」の書き方**でつまずくケースは少なくありません。

この記事では、企業版ふるさと納税の申告が初めての方でもスムーズに手続きを完了できるよう、国税(法人税)と地方税の申告について、以下の点を分かりやすく解説します。

  • 申告手続きの全体像がわかる4つのステップ
  • 具体的な数字を入れた別表の記載例
  • 損金算入と税額控除の計算方法
  • 必要な添付書類のチェックリスト
  • 実務で役立つ会計処理(仕訳)の例

この記事を読めば、申告書作成から提出までの一連の流れを理解し、ミスなく手続きを進めることができます。ぜひ最後までご覧ください。

企業版ふるさと納税申告の4ステップ

企業版ふるさと納税の税優遇を受けるための申告手続きは、大きく分けて4つのステップで進みます。まずは全体像を把握しましょう。

  • ステップ1:寄付と受領証の入手 申告の前提として、認定された地方創生事業へ寄付を行い、自治体から「寄附金の受領証」を受け取ります。
  • ステップ2:国税(法人税)の申告書作成 法人税の申告書と、税額控除の計算に必要な別表を作成します。
  • ステップ3:地方税の申告書作成 法人住民税・法人事業税の申告書と、税額控除の計算に必要な別表を作成します。
  • ステップ4:申告書と添付書類の提出 作成した申告書と必要書類を、税務署および地方自治体に提出します。

それぞれのステップについて、詳しく見ていきましょう。

ステップ1:寄付と受領証の入手

申告手続きの第一歩は、寄付の実行と証明書類の入手です。

企業版ふるさと納税の対象となるのは、内閣府が認定した「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」に対する寄付です。寄付を行うと、寄付先の地方公共団体から**「寄附金の受領証」**が発行されます。

この受領証は、税額控除を受けるために必ず必要となる証明書類です。申告時期まで大切に保管してください。

ステップ2:国税(法人税)の申告書作成

次に、国税である法人税の申告書を作成します。企業版ふるさと納税の税優遇を適用するには、通常の法人税申告書に加えて、主に以下の2つの別表を作成・添付する必要があります。

  • 別表十四(二) 「寄附金の損金算入に関する明細書」
  • 別表六(二十四) 「地域再生法等の規定による特別控除に関する明細書」

これらの別表で、寄付金の損金算入額と税額控除額を計算し、申告書本体に反映させます。

ステップ3:地方税の申告書作成

国税とあわせて、地方税(法人住民税・法人事業税)の申告準備も進めます。地方税の申告では、主に以下の様式を使用します。

  • 第二十号様式別表九 「寄附金税額控除額の計算に関する明細書」

この様式で、法人住民税および法人事業税からの税額控除額を計算します。

ステップ4:申告書と添付書類の提出

最後に、作成したすべての申告書と添付書類を、それぞれの提出先に提出します。

  • 国税(法人税) 所轄の税務署
  • 地方税(法人住民税・法人事業税) 事業所が所在する都道府県および市町村

提出は、e-Tax(国税)やeLTAX(地方税)を利用した電子申告が便利です。もちろん、書面での提出も可能です。

【国税】法人税別表の書き方と記載例

ここからは、この記事の核心である法人税別表の具体的な書き方を、記載例を交えて解説します。

【記載例の前提条件】

  • 法人名 株式会社サンプル
  • 事業年度 X1年4月1日~X2年3月31日
  • 資本金 5,000万円
  • 法人税の所得金額 2,000万円
  • 寄付内容 A県B市の地方創生事業へ100万円を寄付

別表十四(二)「寄附金の損金算入」の書き方

**別表十四(二)**は、寄付金のうち、いくらを損金(経費)として算入できるかを計算するための書類です。

企業版ふるさと納税による寄付金は、全額が損金算入の対象となります。この別表では、その計算過程を明確に示します。

  • 「支出寄附金の明細」欄(上部)
    • 寄附先の名称及所在地 「A県B市」のように、寄付先の自治体名を記入します。
    • 支出年月日 寄付金を支払った年月日を記入します。
    • 支出金額 寄付した金額「1,000,000」を記入します。
  • 「寄附金の損金算入額の計算」欄(下部)
    • 25 特定寄附金の額の合計額 「支出金額」と同じ「1,000,000」を記入します。
    • 26 損金算入限度額 企業版ふるさと納税は全額損金算入が可能なため、ここでは計算は不要です。
    • 32 損金算入額 「25」の金額「1,000,000」を記入します。この金額が、法人税申告書別表四の「損金算入寄附金額」に転記されます。

別表六(二十四)の書き方

別表六(二十四)は、企業版ふるさと納税の大きなメリットである「税額控除」の金額を計算するための書類です。

  • 「控除対象寄附金額の計算」欄
    • 1 地方創生応援税制に係る寄附金の額 寄付した金額「1,000,000」を記入します。
  • 「税額控除限度額の計算」欄
    • 6 控除限度額 法人税額に一定の率を乗じて計算します。
      • 法人税割額 × 20%
      • (例)法人税額が300万円の場合、控除限度額は60万円となります。
  • 「法人税の額から控除される金額の計算」欄
    • 10 控除対象寄附金額 「1」の金額「1,000,000」を転記します。
    • 11 控除割合 「40%」と記入します。
    • 12 寄附金に係る税額控除額 「10」×「11」で計算します。「1,000,000 × 40% = 400,000」となります。
    • 14 控除限度額 「6」の金額「600,000」を転記します。
    • 15 控除される金額 「12」と「14」のいずれか少ない方の金額を記入します。この例では「400,000」です。この金額が、法人税申告書別表一の「税額控除額」に転記されます。

損金算入額と税額控除額の計算例

上記の例を基に、税負担の軽減効果を具体的に計算してみましょう。

  1. 損金算入による軽減効果 寄付金100万円が損金に算入されることで、課税所得が100万円減少します。法人実効税率を約30%と仮定すると、約30万円(100万円 × 30%)の法人税等が軽減されます。
  2. 税額控除による軽減効果 法人税額から直接40万円が控除されます。

合計すると、**「損金算入(約30万円)+ 税額控除(40万円)= 約70万円」**の税負担軽減効果が得られます。つまり、100万円の寄付に対して、実質的な企業負担は約30万円となります。 ※2024年4月1日以降に開始する事業年度からは、税額控除の特例措置により、最大で寄付額の約9割の軽減効果が見込めます。

【地方税】申告書の書き方と記載例

国税だけでなく、地方税(法人住民税・法人事業税)の申告でも税額控除の手続きが必要です。ここでは、東京都以外の道府県・市町村に提出する標準的な様式である**「第二十号様式別表九」**を例に解説します。

第二十号様式別表九の書き方

この様式は、法人住民税と法人事業税の税額控除額を計算するために使用します。

  • 「1 寄附金税額控除額の計算に関する明細」欄
    • 寄附先の名称 「A県B市」と記入します。
    • 寄附年月日 寄付金を支払った年月日を記入します。
    • 寄附金額 「1,000,000」を記入します。
    • 控除対象寄附金額 「1,000,000」を記入します。
    • 法人事業税の控除額 寄付金額の20%(ただし、法人事業税額の20%が上限)を計算して記入します。 例:1,000,000円 × 20% = 200,000円
    • 道府県民税(法人税割)の控除額 寄付金額の10%(ただし、法人税割額の20%が上限)を計算して記入します。 例:1,000,000円 × 10% = 100,000円
    • 市町村民税(法人税割)の控除額 寄付金額の10%(ただし、法人税割額の20%が上限)を計算して記入します。 例:1,000,000円 × 10% = 100,000円

これらの計算により、法人税の税額控除(40%)と合わせて、寄付額の合計70%(20%+10%+10%+40%)が税額から控除されることになります。

複数自治体へ寄付した場合の記載方法

複数の自治体に寄付を行った場合は、寄付先ごとに分けて「第二十号様式別表九」に記載します。各行にそれぞれの自治体名、寄付年月日、寄付金額を記入し、合計額を下の「計」の欄にまとめます。

都道府県・市町村への提出方法

地方税の申告書は、事業所が所在する都道府県と市町村の両方に提出する必要があります。例えば、本社がC県D市にあれば、C県とD市の両方に申告書を提出します。

この手続きは、地方税ポータルシステム**「eLTAX(エルタックス)」を利用すれば、複数の提出先に一括で電子申告**できるため、非常に効率的です。

申告に必要な添付書類チェックリスト

申告漏れを防ぐため、必要な書類をチェックリストで確認しましょう。

国税申告の必要書類

  • 法人税申告書(別表一)
  • 別表十四(二)「寄附金の損金算入に関する明細書」
  • 別表六(二十四)「地域再生法等の規定による特別控除に関する明細書」
  • 寄附金の受領証(写し)

地方税申告の必要書類

  • 法人住民税・法人事業税申告書(第六号様式など)
  • 第二十号様式別表九「寄附金税額控除額の計算に関する明細書」
  • 寄附金の受領証(写し)

寄付金の受領証(写し)の準備

**「寄附金の受領証」**は、国税・地方税の両方の申告で添付が求められる最も重要な書類です。寄付先の自治体から送付されたら、すぐにコピーを取り、原本と共に大切に保管しておきましょう。電子申告の場合は、PDFなどのデータ形式で添付します。

会計処理と勘定科目(仕訳例)

経理担当者として、申告だけでなく日々の会計処理も重要です。企業版ふるさと納税を行った際の仕訳例を紹介します。

寄付実行時の仕訳

寄付金を支払った際は、**「寄付金」**として費用計上します。

借方 貸方
寄付金 1,000,000 現金預金 1,000,000

決算整理時の仕訳

決算時に、税額控除額が確定したら、その金額を**「法人税、住民税及び事業税」**から控除する仕訳を行います。

借方 貸方
租税公課 700,000 法人税、住民税及び事業税 700,000

※税額控除額(この例では法人税40万円+地方税30万円=70万円)を、費用である「法人税等」から減額します。相手勘定は「租税公課」や「雑収入」など、企業の会計方針に応じて処理します。

使用する勘定科目

  • 寄付金 営業外費用に区分される勘定科目です。企業版ふるさと納税の支出を記録します。
  • 法人税、住民税及び事業税 税引前当期純利益から控除される税金費用です。税額控除により、この金額が減少します。
  • 租税公課 税額控除額を法人税等から減額する際の相手勘定として使用されることがあります。

企業版ふるさと納税申告のQ&A

最後に、申告時によくある質問とその回答をまとめました。

受領証を紛失した場合の対処法は?

万が一「寄附金の受領証」を紛失してしまった場合は、速やかに寄付先の自治体に連絡し、再発行が可能か相談してください。 再発行には時間がかかる場合があるため、紛失に気づいたらすぐに行動することが重要です。

申告を忘れた・間違えた場合の修正方法は?

申告期限後に税額控除の適用を忘れていたことに気づいた場合は、「更正の請求」という手続きを行うことで、納めすぎた税金の還付を受けられる可能性があります。 法定申告期限から5年以内であれば請求可能です。間違いに気づいた場合は、税理士や所轄の税務署に相談しましょう。

税額控除の上限額シミュレーションはできる?

はい、できます。 寄付を行う前に、自社の税額控除の上限額がどのくらいになるか把握しておくことは非常に重要です。内閣府地方創生推進事務局のウェブサイトに、簡単なシミュレーション機能が用意されています。 (参考:内閣府地方創生推進事務局 企業版ふるさと納税ポータルサイト https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/kigyou_furusato.html)

まとめ

今回は、企業版ふるさと納税の申告における別表の書き方を中心に、手続きの全体像から会計処理までを解説しました。

最後に、この記事の重要なポイントを振り返ります。

  • 申告は4ステップ 「受領証入手 → 国税申告書作成 → 地方税申告書作成 → 提出」の流れを意識する。
  • 国税の重要別表は2つ 損金算入は**「別表十四(二)」、税額控除は「別表六(二十四)」**に記入する。
  • 地方税は「第二十号様式別表九」 法人住民税・事業税の税額控除を計算するために必要。
  • 「受領証」は必須 国税・地方税の両方の申告に添付が必要なため、大切に保管する。

企業版ふるさと納税の申告は、一見すると複雑に感じられるかもしれません。しかし、どの書類に何を記入するのかを一つひとつ確認しながら進めれば、決して難しい手続きではありません。

この記事の記載例やチェックリストを参考に、落ち着いて申告準備を進めてください。

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