企業版ふるさと納税の災害寄附ガイド!実質負担1割の節税と手続き

大規模な自然災害が発生した際、被災地のために「自社として何か支援をしたい」と考える企業は少なくありません。その際、有力な選択肢となるのが「企業版ふるさと納税」を活用した災害寄附です。

この制度を利用すれば、被災自治体への支援を行いながら、最大で寄附額の約9割に相当する税額軽減を受けることができます。つまり、実質的な負担を約1割に抑えつつ、大きな社会貢献を実現できるのです。

本記事では、企業のCSR担当者や経理責任者の方に向けて、災害支援における企業版ふるさと納税の仕組みやメリット、具体的な手続きについて詳しく解説します。


企業版ふるさと納税の災害寄附とは

災害時における企業版ふるさと納税は、被災した自治体が実施する復興事業に対して、企業が寄附を行う仕組みです。

制度の仕組みと概要

企業版ふるさと納税とは、国が認定した地方公共団体の地方創生プロジェクト(地域再生計画)に対して企業が寄附を行った場合に、法人関係税から税額控除される制度です。正式名称を「地方創生応援税制」といいます。

災害発生時には、多くの自治体が「復興支援」を目的としたプロジェクトを立ち上げます。企業はこのプロジェクトを指定して寄附を行うことで、被災地のインフラ復旧や産業再生を直接的に支援することが可能です。

地方創生応援税制の根拠法令

この制度は、地域再生法を根拠としています。企業が地方公共団体に行う寄附を促進し、地方創生を加速させることを目的として創設されました。

通常の寄附金とは異なり、国が認定した事業に対する寄附であるため、非常に高い税制優遇措置が設けられているのが特徴です。

通常の寄附金との違い

一般的な寄附(指定寄附金など)と企業版ふるさと納税の最大の違いは、税額控除の有無にあります。

  • 通常の寄附 寄附額の全額が損金算入されますが、それによる税の軽減効果は約3割にとどまります。
  • 企業版ふるさと納税 損金算入による約3割の軽減に加え、さらに最大6割の税額控除が上乗せされます。

このように、企業版ふるさと納税は通常の寄附よりも圧倒的に手厚い優遇を受けられる仕組みとなっています。

(参考:https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikireisei/furusato_tax/index.html)


最大約9割の税額控除とメリット

企業版ふるさと納税を活用する最大のメリットは、キャッシュアウトを抑えながら多額の支援ができる点にあります。

法人住民税と法人税の税額控除

寄附額の最大6割が、以下の内訳で直接税金から差し引かれます。

  • 法人住民税 寄附額の4割を上限に控除(法人住民税法人税割額の**20%**が限度)。
  • 法人税 法人住民税で4割に達しない場合、その残額を法人税から控除(寄附額の1割、かつ法人税額の**5%**が限度)。
  • 法人事業税 寄附額の2割を上限に控除(法人事業税額の**20%**が限度)。

損金算入による法人税の軽減

企業版ふるさと納税による寄附金は、全額が損金算入の対象となります。これにより、寄附額の約3割(法人実効税率相当)の税負担が軽減されます。

前述の税額控除(最大6割)と合わせることで、合計で寄附額の約9割が軽減される仕組みです。

実質負担1割の計算シミュレーション

具体的に、1,000,000円を寄附した場合のシミュレーションを見てみましょう。

  • 損金算入による軽減効果300,000円
  • 税額控除による軽減効果 最大600,000円
  • 合計軽減額900,000円
  • 実質負担額100,000円

このように、1,000,000円の支援を行っても、企業の実際の負担は100,000円程度で済むことになります。**「少ない負担で大きな支援ができる」**という点は、社内決裁を通す際にも非常に強力な根拠となります。


災害支援における寄附の対象と要件

災害支援として寄附を行う際には、いくつかの要件を満たす必要があります。

対象自治体と事業の確認方法

寄附の対象となるのは、内閣府から「地域再生計画」の認定を受けている地方公共団体です。災害時には、被災自治体が「災害復旧・復興」に関する計画を迅速に申請し、認定を受けるケースが多く見られます。

対象となる自治体や具体的な事業内容は、内閣府の「企業版ふるさと納税ポータルサイト」で確認できます。また、災害発生直後は自治体のホームページで直接告知されることも多いため、併せてチェックすることをお勧めします。

寄附金の損金算入限度額

企業版ふるさと納税には、個人のふるさと納税のような「年収による上限」という考え方はありません。ただし、税額控除には法人住民税額等の20%といった上限があります。

上限を超えた分については、通常の寄附金と同様に「全額損金算入」のみの適用となります。最大限のメリットを享受するためには、自社の納税予測額に基づいた計算が必要です。

令和6年度以降の制度変更点

企業版ふるさと納税は、令和2年度の税制改正で控除割合が大幅に引き上げられました。この拡充措置は当初、令和6年度(2024年度)末までの期限付きでしたが、令和6年度税制改正により、さらに5年間(令和11年度末まで)の延長が決定しています。

これにより、今後数年間にわたって安定的にこの制度を活用した災害支援を計画することが可能となりました。


災害寄附の手続きと申告の流れ

災害支援はスピードが重要ですが、税額控除を受けるためには正しい手順を踏む必要があります。

自治体への寄附申し出方法

まずは、支援したい自治体に対して「寄附申出書」を提出します。多くの自治体では、公式サイトから様式をダウンロードできるようになっています。

災害時には、自治体側で専用の受付窓口や特設ページを設けていることが多いため、まずは**「自治体名 企業版ふるさと納税 災害」**などのキーワードで検索してみましょう。

寄附金の払い込みと受領書の発行

申告書を提出した後、自治体が指定する方法(銀行振込など)で寄附金を払い込みます。

入金確認後、自治体から受領証が発行されます。この受領証は、後の税務申告で必ず必要になる重要な書類ですので、大切に保管してください。

法人税申告時の必要書類と注意点

法人税の確定申告の際に、以下の対応を行います。

  • 申告書への記載 法人税申告書の別表等に、寄附金の額や控除額を記載します。
  • 受領証の添付 自治体から発行された受領証の写しを添付(または提示)します。

手続き自体はそれほど複雑ではありませんが、**「寄附の時期」**には注意が必要です。その事業年度の税額控除を受けるためには、期末までに支払いを完了させておく必要があります。


寄附時の注意点と禁止事項

制度を正しく利用するために、以下の制限事項を必ず遵守してください。

見返りや利益供与の禁止ルール

企業版ふるさと納税では、寄附の代償として自治体から経済的な利益を受け取ることが禁止されています。

  • 禁止されている例
    • 寄附の見返りとして補助金を受け取る。
    • 有利な条件で入札に参加させてもらう。
    • 物品(返礼品)を受け取る。

ただし、自治体のホームページでの企業名公表や、感謝状の贈呈などは「利益供与」には当たらず、認められています。

本社所在自治体への寄附制限

自社の本社(地方税法上の主たる事務所または事業所)が所在する自治体への寄附については、本制度の対象外となります。

例えば、東京都港区に本社がある企業は、港区への寄附でこの制度を利用することはできません。ただし、支店や工場があるだけの自治体への寄附は可能です。

1回10万円以上の最低寄附額

企業版ふるさと納税として認められる寄附額は、1回あたり100,000円以上です。これに満たない金額の寄附は、通常の寄附金として扱われ、最大9割の税額控除は受けられませんので注意してください。


災害支援の活用事例と実績

過去の災害においても、多くの企業がこの制度を活用して被災地を支援しています。

熊本県と能登半島地震の活用事例

熊本県(熊本地震・令和2年7月豪雨)

熊本県では、被災したインフラの復旧や、被災者の生活再建支援事業において多くの企業版ふるさと納税を受け入れました。特に、阿蘇地域の観光復興や農業支援などに活用された実績があります。

今回令和8年7月の熊本地震でも多くの企業から寄付が寄せられており、復旧復興支援に役立てられます。

能登半島地震(令和6年)

令和6年に発生した能登半島地震においても、石川県や周辺自治体が企業版ふるさと納税による寄附を募っています。瓦礫の撤去や仮設住宅の整備など、緊急性の高い事業に充てられています。

内閣府認定事業の選び方

災害支援といっても、その内容は多岐にわたります。

  • インフラ復旧 道路や橋、公共施設の再建。
  • 産業支援 被災した農家や中小企業の事業継続支援。
  • 教育・福祉 学校設備の復旧や、高齢者支援。

自社の事業領域に近い分野や、SDGsの目標に合致する事業を選ぶことで、より意義のある支援が可能になります。

企業イメージ向上への寄与

企業版ふるさと納税による災害支援は、単なる節税対策にとどまりません。

  • CSR(企業の社会的責任)の遂行 社会課題に対して積極的に取り組む姿勢を内外に示せます。
  • ステークホルダーからの信頼獲得 株主、従業員、顧客に対して、自社の価値観を具体的に提示できます。
  • 自治体との連携強化 寄附を通じて自治体との接点が生まれ、将来的な官民連携のきっかけになることもあります。

まとめ

企業版ふるさと納税を活用した災害寄附は、被災地への強力な支援と、企業側の税負担軽減を両立できる極めて合理的な制度です。

実質負担約1割というメリットを活かせば、予算以上の規模で社会貢献を行うことが可能になります。被災地の復興には長い時間がかかります。一過性の支援に終わらせず、制度を賢く利用して、継続的な支援の輪を広げてみてはいかがでしょうか。

まずは、内閣府のポータルサイトや被災自治体のホームページで、現在募集されている事業を確認することから始めてみてください。

(参考:https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikireisei/furusato_tax/index.html)

熊本県内への企業版ふるさと納税をご検討中の企業ご担当者様がいらっしゃいましたら、サポートを無料でしておりますので、お気軽にお問い合わせください。